蔦川流域における地すべり地は、青森県十和田市大字奥瀬字蔦国有林114林班内に位置し、十和田八幡平国立公園の第一種特別地域内の貴重な自然環境を有しています。 地すべり活動による土砂崩壊を防止し、水源かん養保安林としての機能を維持するとともに、周辺の自然生態系と観光資源(蔦温泉・蔦沼)を守ることが本工事の目的です。
地下水排除工(集水井工・集水ボーリング工・排水ボーリング工)により地すべり地内の有圧地下水を集水・排水し、 地下水位を低下させることで斜面の安定性を高め、地すべりの再活動を抑制します。
| 工事名 | 蔦川地すべり防止工事 |
|---|---|
| 施工会社 | 田中建設工業株式会社 |
| 工事場所 | 青森県十和田市大字奥瀬字蔦国有林 114林班内 |
| 発注機関 | 三八上北森林管理署(東北森林管理局 林野庁) |
| 事業主体 | 農林水産省 林野庁 東北森林管理局 |
| 事業年度 | 令和7年度 国有林野事業 |
| 工期 | 令和8年3月26日 〜 令和9年2月26日 |
蔦川流域の地すべり地は、軽石凝灰岩(溶結部・非溶結部)からなる地質に起因する地すべりが過去から発生しており、これまでに複数の集水井工(No.1〜No.9)が設置されています。
今回の工事では新たにNo.10集水井工を設置し、上段・下段合計20本の集水ボーリング工により1,400mの集水システムを構築。有圧地下水帯を効果的に排水します。
地下水位の低下により、地すべり滑動力の主要因である間隙水圧を減少させ、斜面の長期的な安定を確保します。
| 構造形式 | ライナープレート土留工法 B工法 |
|---|---|
| 掘削径 | φ3.50m |
| 掘削深度 | 29.5m(全長30.0m) |
| 土質区分 | 礫質土 6.8m / 軟岩(Ⅰ) 22.7m L1(土砂類)6.3m / L2(岩類)22.7m |
| ライナープレート | t=2.7mm 径3500mm 補強リング H125×125×6.5×9(めっき後塗装) |
| 基礎コンクリート天端高 | EL=397.60m |
| コンクリート | 口元固定 18-8-40(標準)人力打設 静水槽 18-8-40(標準) |
| 井戸蓋 | φ3.5m 亜鉛めっき品 2分割 467.0kg |
| 安全柵 | 集水井用 φ3.5m用 杉ロータリー加工丸太製 |
| ライナープレート地上部 | 井戸径3.5m 1m組立 |
| 本数 | N=12本 |
|---|---|
| 合計延長 | ΣL=840.0m |
| 1本当り延長 | L=70.0m |
| 打設位置 | GL-19.75m(井底+19.75m) |
| 打設角度 | 10.0°(仰角) |
| 保孔管 | VP-40 有孔管 |
| 掘削径 | φ90mm |
| 土質区分 | 軟岩(Ⅰ)区間 |
| 本数 | N=8本 |
|---|---|
| 合計延長 | ΣL=560.0m |
| 1本当り延長 | L=70.0m |
| 打設位置 | GL-27.75m(井底+27.75m) |
| 打設角度 | 3.0° |
| 保孔管 | VP-40 有孔管 |
| 掘削径 | φ90mm |
| 延長 | L=66.9m |
|---|---|
| 打設角度 | -3.0°(俯角・下向き) |
| 保孔管 | SGP 100A4B(無し) |
| 掘削径 | φ135mm |
| 土質区分 | 岩塊・玉石〜軟岩(Ⅰ) |
本工事では「ゼロ災害・ゼロ事故」を最優先目標とし、東北森林管理局が定める「労働災害の未然防止」指針に基づき、現場作業員全員が安全意識を持って作業します。労働安全衛生法・森林土木工事安全施工技術指針を遵守し、安全施工を徹底します。
国立公園・保安林・急峻な山間地という特殊な環境での施工のため、一般の工事現場とは異なるリスクに対応した安全管理を実施します。
深さ29.5mの集水井内部では、土中有機物の分解等による酸素濃度低下や有毒ガスの発生が起こり得ます。作業開始前に酸素濃度・可燃性ガス・一酸化炭素濃度を測定し、安全を確認してから入坑します。
直径300〜400mm程度の送風管を井戸内に配管し常時換気を実施。緊急時の退避場所を確保するとともに、降下・上昇時間を考慮した安全確認体制を整えています。
ライナープレートや重機材の搬入・搬出作業では、深い井戸内に吊り荷を降ろすためクレーン運転者から内部の状況が直接見えません。クレーンのブームにカメラを装着し、運転室のモニターで井戸内の状況をリアルタイムで確認しながら安全に玉掛け・搬入作業を行える体制を構築しています。



本工事は「熱中症対策に資する現場管理費補正」の試行工事に指定されています。WBGTモニタリングを実施し、暑さ指数に応じた作業制限・休憩確保を徹底します。こまめな水分・塩分補給、冷却グッズの活用と日陰の確保を組み合わせ、山間地特有の高温多湿環境での熱中症を予防します。
国立公園内の施工のため、山火事の発生防止を徹底します。林野火災警報・注意報の発令情報を常時把握し、発令時は火の使用を制限します。溶接・切断等の火気作業前は周辺の可燃物を除去し、消火器・消火バケツを作業箇所に配備します。

山間地での施工のため、スズメバチをはじめとする蜂の巣が形成されるリスクがあります。作業前に周辺の蜂の巣の有無を確認し、発見した場合は即座に作業を中断して対応します。蜂刺されが発生した場合は速やかに作業を中断し、適切な応急処置を行います。
蔦川流域は十和田八幡平国立公園内に位置し、クマの生息地域です。近年の出没件数増加を踏まえ、作業員が山中を移動・測量する際は必ず熊鈴・ラジオ・クマ除けスプレーを携行します。作業箇所には「熊注意」標識を設置して注意喚起を行い、単独での山中作業を禁止しています。
現場事務所にAED(自動体外式除細動器)を設置しています。管理者が定期的にバッテリーおよび電極パッドの使用期限を確認・管理します。また、作業員全員がAEDを使用できるよう定期的な救命講習を実施しています。最寄りの医療機関から遠い山間地でも、万一の心停止時に迅速に対応できる体制を整えています。
定期的な避難・救急訓練を実施し、緊急時の対応力を高めます。また、現場に雨量計を設置して降水量を常時監視しています。時間雨量30mm・累計降雨量100mmに達した時点を作業中止の目安とし、土石流等の自然災害から作業員の安全を守ります。



施工区域は登山者・観光客が利用するエリアに近接しています。工事箇所への関係者以外の立入りを防止するため、工事看板・バリケードおよび「関係者以外立入禁止」の進入禁止柵を適切に設置します。工事車両が道路と現場を出入りする際には誘導員を配置し、工事関係車両と一般利用者の接触を防止します。
深さ29.5mの集水井内部での作業における最大リスクが転落です。単管パイプまたはライナープレートを用いて、高さ85cm以上の手摺りを掘削面に取り付け転落を防止します。休憩中および休工時は安全ネットを取り付けて開口部を覆い、常に墜落防止措置を講じます。


その他にも各種法令・基準等に則って安全施工を進めていきます。
蔦川地すべり防止工事の施工区域は、十和田八幡平国立公園の第一種特別地域・水源かん養保安林・鳥獣保護区特別保護地区・砂防指定地に指定された、自然環境上きわめて重要なエリアです。
施工に際しては環境への影響を最小限に抑えるため、工法の選定・使用機械・施工時期・廃棄物管理等のあらゆる面で環境配慮に取り組みます。
施工前に希少植物の生育状況を調査し、施工区域内の個体を安全な場所へ移植して保護します。施工完了後は元の環境への復元を図ります。
施工で使用する重機・車両への種子付着を防ぐため、現場入場前に洗浄を実施します。域外産植物の種子が国立公園内に持ち込まれないよう徹底管理します。
ボーリング工の施工で発生する濁水(スライム)は、バイオログフィルターPADによって濾過・沈殿処理を行い、清澄水として再利用します。また、油漏れ等の突発的な汚染事故に備え、環境対応型洗浄剤(アースクリーン)を現場に常備し、土壌・水質汚染の防止に努めています。